【資産安心コラム】2ページ バブル期に多額の相続税を払った悪夢が、改正で再び訪れる?
田所家は古くから地域に根を張る地主です。現当主の清重さんは、昭和62年に父・重盛さんが亡くなったときに、ほとんどすべての財産を相続。その際、多額の相続税を払うために、多くの土地を売却しました。平成27年に相続税が改正されたことから、再び頭を悩ませています。
平成27年より基礎控除が4割下がり、相続税を納める人が倍にもなるといわれる今回の相続税増税。しかし、もっと相続税が重い時代がありました。それは昭和から平成初期のまさにバブル崩壊直後のことです。田所家の相続が発生した昭和62年は、まさにこの「相続税重税時代」のさなかでした。
路線価の上昇は地価の推移と若干タイムラグがあります。さらに相続税の申告納付時期にも時差があります。最も高い評価額で土地を相続した場合は、相続税を納付するときにはバブルが崩壊して路線価評価以下でも売却できない「相続税破産」という悲劇が起こりました。このころの資産家にとって、相続はまさに地獄でした。これを受けて、相続税は大幅に減税されたのです。
【地価の推移と相続税の改正】
財務省の発表によりますと、相続税及び贈与税の税収のピークは平成5年の2兆9377億円で、資産バブルの崩壊後は減少傾向にありました。一方相続税の課税割合(相続税の課税件数を死亡者数で割った率)は昭和62年の7.9%がピークで、平成23年は4.1 %でした。
そもそも日本の相続財産は、約6割が土地などの不動産資産とされています。グラフの「相続税・贈与税収の推移」と公示地価の推移を重ねてみると、相続税の課税割合と公示地価のラインがぴったり一致します。グラフの相続税の課税割合のラインが昭和63年でいったん下がっているのは、この年に相続税の基礎控除の大幅な引き上げがあったからです。「2,000万円+200万円×法定相続人数」から「4,000万円+800万円×法定相続人数」と増加、最高税率も75%から70%になっています。平成15年には基礎控除も「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」にまで増え、最高税率も50%に下がりました。
さて、平成27年にその相続税の基礎控除が大幅に下がり、「3,000万円+600万円×法定相続人数」となり、最高税率も55%となりました。都市部の地価も反転し、路線価も上がっています。増税により、相続税の課税割合が激増すると推測されます。
昭和62年の「悪夢の相続」から30年近く経った現在、清重さんは再び「また相続税を払わなければいけないのか」と戦々恐々になりました。これまでも多くの不動産を手放し「もう多額の相続税を払わなくてもいい」と安心した矢先に、相続税が改正されたからです。清重さんは相続対策に重い腰を上げました。
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※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。
[POINT]
バプル期をピークに、いったん課税割合が減少傾向にあった相続税だが、再び多くの人が対象になる
「うちは大丈夫と言われてきた」という方こそ、相続対策に着手しよう
記事提供:相続一贈与相談センター本部税理士法人エクラコンサルティング