【資産安心コラム】2ページ 相続時精算課税で子が先に死亡したら税金はどうなる?(前編)

相続時精算課税の適用を受けている子(贈与を受けた人)は、親(贈与者)が死亡した場合には、相続時精算課税の適用を受けた財産を相続財産に加えて、相続税を計算します。しかし、親より先に子が死亡した場合にはどうなるのでしょうか?本来子がするであろう親の相続税の負担を誰がするかという問題が発生します。事例を基に今回から2回に分けて紹介します。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の推定相続人である子または孫に対し、財産を贈与した場合に選択できる贈与税の制度。控除額は2,500万円(累積)で、控除額に達するまで複数年にわたり利用できます。控除額を超える贈与を受けた場合は、超える金額について贈与税を納付し(税率は一律20%)、贈与者の死亡の時に、それまでの贈与財産が贈与時の価格で相続財産へ組み込まれた上で、納付した贈与税は相続税で精算されます。

【相続時精算課税選択届出書を提出する前に死亡】

松宮浩伸さん(50歳)は、平成26年1月に相続時精算課税の適用を受けるつもりで、父・浩充さん(80歳)から3,000万円の贈与を受けました。しかし、浩伸さんは、相続時精算課税の適用を受けるための相続時精算課税選択届出書を提出する前(平成27年1月)に急逝しました。この場合、特定贈与者(浩充さん)の死亡以前にその特定贈与者に係る相続時精算課税適用者(浩伸さん)が死亡した場合には、その者の相続人(包括受遺著を含む)は、その者(浩伸さん)が有していたこの規定の適用を受けていたことに伴う納税に係る権利または義務を承継します。浩伸さんの遺産は、贈与を受けた3,000万円を含めて4,000万円。相続人は妻・麻紀子さん(48歳)と子・駿太さん(15歳)です。麻紀子さんは遺産のうち2,500万円を相続し、駿太さんは1,500万円を相続しました。そして、3,000万円の贈与について相続時精算課税の適用を受ける手続きを取りました。浩伸さんの相続人の麻紀子さんと駿太さんは、浩伸さんの権利と義務を引き継ぐので、死亡した日から10ヵ月後までに、浩伸さんの贈与税の申告が必要です。その際、相続時精算課税選択届出書を提出すると相続時精算課税の適用を受けることができます。贈与税は次の通り。

(3,000万円-2,500万円)×20%=100万円(相続時精算課税の贈与税額)

ちなみに、相続時精算課税選択届出書を提出しないと、浩充さんから孫の駿太さんへの通常の贈与(暦年課税贈与)になります。贈与税は次の通りです。

(3,000万円-110万円)×50%-225万円= 1,220万円

一方、相続税については、遺産が相続税の基礎控除4,200万円(=3,000万円+600万円×法定相続人2人)以下であるため申告は不要です。

これで、浩伸さん死亡分の税金の申告は終了です。しかし、平成27年9月には父の浩充さんが死亡。事態が複雑になりました。続きは次号にて解説いたします。相続時精算課税制度の適用を受けるにあたっては、慎重に検討しましょう。

相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。

[POINT]

  • 相続時精算課税の適用を受けていて、親より先に子が死亡した場合、子の相続人(配偶者、子など)が納税に関する権利または義務を承継する
  • 相続時精算課税の適用を受けるにあたっては、慎重に検討しよう

記事提供:相続・贈与相談センター本部税理士法人エクラコンサルティング