【今からできる相続対策】3ページ 「こんな遺言なら、ないほうがマシ」争いを招く「困った遺言」とは?

最もポピュラーかつ有効な相続対策のひとつとして、遺言が挙げられます。「遺言があったから、トラブルにならずに済んだ」という事例は多数あります。一方で「遺言のせいで、トラブルになった」例も少なくありません。どんな遺言が争いを招いてしまうのでしょうか?

「遺言さえあれば、相続争いを未然に防げた」というケースは多いです。ただし、これは「きちんとした遺言」であることが大前提です。要件を満たしていなかったり、文意解釈の相違が生じる遺言があると、逆に争いを招いてしまいます。「こんな遺言なら、ないほうがマシ」と、遺族に恨まれかねません。では、どのような遺言が争いを招いてしまうのでしょうか。主な例を2つ紹介します。

1.遺留分を無視した遺言

たとえば「家業を継いでくれた次男に全財産を相続させる」というように、特定の相続人に遺産を集中させる遺言を記す場合、遺言自体は有効ですが、必ずトラブルを招きます。この場合の遺言では、全財産を相続する次男以外の相続人に対しての遺留分を視野に入れる必要があります。遺留分とは、配偶者や子供、直系尊属(父・母等)に関して、遺言書の内容に関係なく一定の範囲内で最低限保証されている相続分。法定相続分の1/2まで、ケースに応じて計算されます。相続が発生した際、財産がもらえなくなった他の相続人は、遺留分を取り戻す権利(遺留分の減殺請求権)があります。このやり取りが訴訟等のトラブルに発展し、家族間の人間関係にひびを入れてしまうのです。遺言の作成にあたっては、遺留分のある相続人にも配慮するよう注意することが求められます。

遺言書に記載されない財産がトラブルを引き起こす

2.財産の記載が漏れた遺言

せっかく遺言書を作成するのなら、全財産について記載することが鉄則です。書き漏れている財産がないようにしましょう。遺言書作成後に財産を購入または処分した場合は、遺言書を見直して、新たに作成しなければいけません。記載していない財産があれば、相続人同士で遺産分割協議を行う必要があり、誰が引き継ぐか争う可能性が出てきます。対策としては、ご自身の誕生日や年末年始などに定期的に遺言書を見直すことが挙げられます。かつ、遺言書に「その他一切の財産を妻に相続させる」というように、記載漏れ財産について記しておくことをおすすめします。遺言は、残される家族に対する愛情表現のひとつ。家族間の争いを望んで遺言を書く人はいません。しかし、結果的に遺言の存在が骨肉の争いを引き起こしてしまうこともあるのです。遺言を作成するときは、専門家の力を活用し、ご自身の思いを確実に伝えましょう。

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