【資産安心コラム】2ページ 相続時精算課税で子が先に死亡したら税金はどうなる?(後編)
相続時精算課税の適用を受けている子(贈与を受けた人)は、親(贈与者)が死亡した場合には、相続時精算課税の適用を受けた財産を相続財産に加えて、相続税を計算します。しかし、親より先に子が死亡した場合にはどうなるのでしょうか?本来子がするであろう親の相続税の負担を誰がするかという問題が発生します。前回に続き、事例を基に紹介します。
【前回のおさらい】
・松宮浩伸さんは、平成26年1月に相続時精算課税の適用を受けるつもりで、父・浩充さんから3,000万円の贈与を受けた
・浩伸さんは、相続時精算課税の適用を受けるための相続時精算課税選択届出書を提出する前(平成27年1月)に死亡
・浩伸さんの妻・麻紀子さんと子・駿太さんが、浩充さん→浩伸さんの3,000万円の贈与について相続時精算課税の適用を受ける手続きを取る
・平成27年9月に浩充さんが死亡
【相続税の税額が相続人の孫と既に死亡した子に按分】
浩充さんの遺産は、浩伸さんへの贈与財産3,000万円を含めて6億円。相続人は、浩充さんの孫・駿太さん1人になります。駿太さんは、浩充さんが死亡した日から10ヵ月後までに相続税の申告が必要になります。既に死亡している浩伸さんへの贈与財産に対する課税と納税(下記2~4)がポイント。相続時精算課税適用者である浩伸さんが死亡したとき、その妻・麻紀子さんと子の駿太さんが相続時精算課税の適用に伴う権利と義務を承継することになります。
・遺産6億円(相続時精算課税適用財産の3,000万円を含む)
・法定相続人…駿太さん1人(基礎控除3,600万円=3,000万円+600万円×1人)
①相続税の総額を計算
(6億円一基礎控除3,600万円)×50%―4,200万円=2億4,000万円(相続税の総額)
②相続税の総額を駿太さんと既に死亡している浩伸さんに按分
駿太さん:2億4,000万円×5億7,000万円/6億円=2億2,800万円(駿太さんが納税)
浩伸さん:2億4,000万円×3,000万円/6億円= 1,200万円(下記3へ)
③浩伸さんの相続税から相続時精算課税贈与税を控除
1,200万円-100万円(相続時精算課税の贈与税額※) =1,100万円(下記4へ)※3,000万円の贈与を受けたときの贈与税
④浩伸さんの相続税を麻紀子さんと駿太さんに分けて、それぞれが納税することになります。これを法定相続分で負担するというのが税法で決められています。
麻紀子さん:1,100万円×1/2 (法定相続分)=550万円(麻紀子さんが納税)
駿太さん:1,100万円×1/2 (法定相続分)=550万円(駿太さんが納税)
先に亡くなった浩伸さんの配偶者・麻紀子さんと子の駿太さんは、後に亡くなった浩充さんの相続税を上記のように負担することになります。相続時精算課税制度を利用して贈与した場合、相続時精算課税適用者が先に死亡したときには、贈与した部分が持戻しされて二重課税になり、通常よりも多額の税金を支払うことになるのです。
相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。
[POINT]
- 相続時精算課税制度を利用して贈与した場合、相続時精算課税適用者が先に死亡したときには、贈与した部分が持戻しされて二重課税になる
- 相続時精算課税の適用を受けるにあたっては、慎重に検討しよう
記事提供:相続・贈与相談センター本部税理士法人エクラコンサルティング