【資産安心コラム】2ページ 「離婚前?」「離婚後?」財産分与はタイミングが大事
柏倉幹彦さん・律子さん夫妻は、30年以上連れ添った夫婦関係を、話し合いによって解消することを決心しました。そこで、気になる問題が発生。夫婦2人で住んでいて、2分の1ずつ共有しているマンションです。律子さんがマンションを出て行くことは決まっているのですが、税金面ではどのように分与すればいいのか、疑問になりました。
幹彦さん・律子さん夫妻が所有しているマンションは、現在の時価が5,000万円。減価償却後の取得原価(簿価)は3,000万円でした。ローン残債は2,000万円となっています。離婚にあたって、律子さん分のローン残債(1,000万円)を幹彦さんが引き継ぎ、幹彦さんが律子さんへ1,500万円の現金を支払うことが決まっています。この場合、マンションの持ち分と残債の清算に関しては、律子さんへの財産分与はありません。簡単にいうと、幹彦さんは時価2,500万円のマンションを、1,000万円のローン付きで律子さんから購入したことと同じになります。
【離婚で相手方から財産をもらえば贈与税がかからない】
離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはありません。相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき、給付を受けたものと考えられるからです。ただし、次のいずれかに当てはまる場合には贈与税がかかります。
1.分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額や、その他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合⇒この場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります
2.離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合⇒この場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。また、不動産の財産分与の場合、「財産分与のときの不動産の時価」が「不動産取得時の時価(建物については減価償却後の価額)」よりも値上がりしていれば、その差額(=譲渡益)に対して、財産分与をした方に譲渡所得税がかかります。不動産の値段が下がっていて、譲渡損が発生した場合、一定の条件を満たせば、他の給与所得等と損益通算をして税金が還付される場合もあります。また、譲渡益が発生していても、財産を分与する側の譲渡所得税を抑える方法もあります。この方法は、財産分与をするタイミングが「離婚前」なのか「離婚後」なのかが重要です。
譲渡所得税と贈与税には、次のA、Bの控除があります。
A.居住用不動産であり、譲渡する相手が親族でない場合は、時価3,000万円までの譲渡益が非課税
B.婚姻期間20年以上の夫婦が居住用資産を贈与する場合、贈与税に関して2,000万円の配偶者控除がある
ここで所有権の登記を移す時期が重要になってきます。Aの制度を利用するのであれば「離婚成立後」に所有権を移転する必要があります。一方、Bの制度を利用するのであれば「離婚成立前」に所有権を移転する必要があるのです。共有マンションは購入時から値上がりしていることから、柏倉夫妻の財産分与は、離婚成立後に律子さんが幹彦さんに売却するという形式を選択しました。
相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。
[POINT]
- 財産分与は離婚前、離婚後のどちらがいいのか、しっかり確認しよう
- 不動産を財産分与する場合、「財産分与時の不動産の時価」が「不動産取得時の時価」より上回っていたら、離婚後に清算したほうがいい場合がある
記事提供:相続・贈与相談センター本部税理士法人エクラコンサルティング