【今からできる相続対策】3ページ 暦年贈与の基礎控除「110万円」にありがちな4つの勘違い

贈与税は1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の金額の合計額に応じて課税されます。この間、基礎控除額の110万円以下の贈与であれば、贈与税がかかりません。しかし、この「110万円」が一人歩きして、勘違いした解釈をしてしまう人が少なくないのです。

【勘違い1】110万円まで税金がかからないなら、父から110万円、母からも110万円贈与されても問題ない

贈与税は、贈与した人(贈与者)が払うのではなく、贈与を受けた人(受贈者)が納める税金です。なので、基礎控除は、贈与者ごとではなく、受贈者ごとに1年間で110万円になります。この場合、父と母から110万円ずつ贈与されれば、合計220万円の贈与を受けたことになり、基礎控除額110万円を引いた110万円に対して贈与税がかかります。

【勘違い2】贈与税がかからないようにするため、毎年100万円を孫の誕生日に贈与すればいい

毎年一定額を継続して贈与するのは要注意です。まとまった金額を意図的に分割して贈与している「連年贈与」と解釈される恐れがあるからです。これは、1年ごとに贈与を受けると考えるのではなく、契約をした年分に、有期定期金に関する権利(10年間にわたり毎年100万円ずつの給付を受ける権利)の贈与を受けたものと解釈される恐れです。この場合、毎年「同じ日」「同じ金額」という点が要注意。毎回違う金額にしたり、贈与をする日を毎年ランダムにしたり、贈与を行う際、毎回贈与契約を結んでおくことなどが大切です。

【勘違い3】孫がまだ小さいから、孫の名前で口座をつくって、そちらに毎年100万円くらい移動させておけばいい

これは「名義預金」とみなされ、贈与した人の財産と解釈されてしまう可能性が大きいです。特に、孫名義の預金の印鑑が、贈与した人の印鑑と同一だったり、孫が遠方にいるのに、贈与した人の地元の金融機関に口座があったり、孫名義の預金残高が年齢の割に多かったりすると、名義預金とみなされてしまうでしょう。対策としては、通帳や印鑑を孫本人に預け、自由にお金を使える状態にしておくことです。孫が未成年の場合は、その親に通帳や印鑑を管理してもらいましょう。ただし、その場合、管理者にあたる親が孫名義の口座から生活費を一時借りるために引き出したりすると、今度は親の名義預金とみなされる可能性がありますので、ご注意ください。

【勘違い4】110万円以下の金額を、さりげなく妻や息子に振り込んでおけばいい

そもそも贈与とは、贈与者(財産をあげる人)が「あげます」と意思表示して、受贈者(財産をもらう人)が「いただきます」と受け取る行為を指します。贈与契約を取り交わし、贈与者が受贈者に財産を渡すことではじめて、贈与が成立します。一方的に振り込んだだけでは、贈与とみなされない可能性があります。最低限、口頭でも贈与を行うことを伝え、了承を得るようにしておきましょう。税務調査が気になる方は、贈与契約書を取り交わすのがよいでしょう。

相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。