【資産安心コラム】2ページ 叔母の資産を相続する際、「養子縁組」と「遺言」のどちらがいい?

工藤美香子さん(54歳)は、母・一枝さんの妹にあたる叔母の浜中次子さん(84歳)のことが気になっていました。生涯独身で、家族もいなく一人暮らし。美香子さんは小さいころからお世話になっていたことから、近

年は身の回りの世話をしています。そこで、いつか訪れる次子さんの相続について気になり出してきました。※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。

美香子さんの母・一枝さんの兄弟姉妹は図1にあるように5人います。全員戦前生まれで健在です。この中で唯一独身の次子さんは、現預金1億円、不動産1億円、合計2億円の資産を持っていました。そこで美香子さんが「次子叔母さんの資産を相続したい」と相談に来ました。「私か叔母さんの養子になればいいんですよね?」と自信ありげに言ってきました。しかし、結論としては、次子さんと美香子さんが養子縁組をすると、税負担が重くなってしまうのです。

養子縁組で基礎控除がぐんと下がり税額アップ

現状ベースでは、次子さんの法定相続人になる人は、兄弟姉妹の4人。つまり、基礎控除が3,000万+600万×4人= 5,400万円です。一方、美香子さんが次子さんと養子

縁組すると、法定相続人は美香子さん一人となります。基礎控除は3、000万+600万×1人= 3,600万円。図2にあるように、税額の違いは倍以上。結果的に養子縁組を

したほうが税金が高くなってしまうのです。

では、遺言ではどうでしょう。もし、次子さんが「姪の美香子さんに全財産を残す」と遺言を書いたらどのようになるかということです。この場合、他の兄弟姉妹には遺留分減殺請求権はありません。全財産を美香子さんに遺贈しても、問題はないでしょう。ただし、美香子さん及び他の兄妹には、相続税額の2割加算があります。一親等の血族及び配偶者以外が相続税を支払う場合、算出相続税額にその20%相当額を加算されるのです。「相続税について考えると、私か養子になると、あまりよくないのね。どうすればいいのか、いろいろ教えてください」美香子さんは、さらなる相談を希望しました。相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。

POINT

●相続対策としての養子縁組で、かえって法定相続人の数が減る場合がある

●一親等の血族及び配偶者以外が相続税を支払う場合、「相続税の2割加算」がある

記事提供:相続・贈与相談センター本部 税理士法人エクラコンサルティング