【資産安心コラム】2ページ 共有相続の後始末前編 仲良し兄妹の共有財産、 財政状況の変化にどう対処する?
70歳の青木義政さんは、首都圏郊外で100年以上続く大地主の長男です。青木家では戦前まで代々長子相続で、長男が全財産を相続し、資産の分散を防いできました。しかし、現在は法定相続の時代。20年前に先代である父の相続が起きた際、長男である義政さん、長女の初美さん、次女の佳恵さんの3兄妹が3分の1ずつ共有で相続しました。
※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。
義政さん、初美さん、佳恵さんが相続した資産のほとんどは先祖代々継承されてきた土地。納税のために一部売却しましたが、相続できた土地には、自宅以外すべて、相続税対策でアパートが建っています。つまり、3兄妹はアパートの敷地と建物をすべて3分の1ずつ共有しているのです。
義政さんがアパートの管理を引き受け、3等分して所得を分配してきました。20年前の相続時には母も健在で、兄妹仲も良かったのですが、年月が経つにつれ、各家庭の財政状況に変化が生じました。
まず、佳恵さんの夫・臼井明さんが5年前に事業に失敗し、経済的に困窮してきました。和樹さんという引きこもりの息子がいて、何かと物入りです。初美さんは開業医・武村平造さんと結婚し、子供はいません。義政さんには妻・夏子さんと息子・伸司さんがいます。
そんなさなか、義政さん自身が病に倒れました。すっかり気弱になった義政さん。資産管理を子供に引き継がせるか、分散した不動産を次の世代にどう継承し、どう管理すればいいのか、不安になってきました。
経済的に困窮した妹夫婦が共有持分買い取りを要求
義政さんが回復すると、経済的に困っている佳恵さん夫婦が「アパートの共有持分を買い取ってほしい」と要求してきました。
収益物件と言っても、共有持分の3分の1では、第三者に売却するわけにいきません。また、義政さんも次の世代の相続で佳恵さんの家に資産が残ると、さらに資産の継承が難しくなると考えていました。
子供がいない初美さんの持分は、遺言により義政さんの子・伸司さんに遺贈してもらうことになっています。しかし、佳恵さんの子・和樹さんに相続された共有持分は、市場で売却処分もできません。いとこ同士の伸司さんと和樹さんとはほとんど付き合いがなく、共同管理するのは現実的ではありません。
そこで義政さんは佳恵さんの持分を買い取ることにしました。しかし、買取価格をいくらにするかで問題が発生したのです。
相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
POINT
- ●兄弟姉妹同士で財産を共有すると、各家庭の財政状況が変化した際に問題が起きる
- ●兄弟姉妹同士で共有財産の管理はできても、その子供同士では不可能な場合が多い
記事提供:相続・贈与相談センター本部 税理士法人エクラコンサルティング