【資産安心コラム】2ページ 共有相続の後始末後編 仲良し兄妹の共有財産、 妹の持分をいくらで買い取る?
青木家は、首都圏郊外で100年以上続く大地主。先代である父の相続が起きた際、長男である義政さん、長女の初美さん、次女の佳恵さんの3兄妹が3分の1ずつ共有で相続しました。義政さんは、経済的に困窮した佳恵さん夫婦から、アパートの共有持分の買い取りを要求されました。
果たして、いくらで買い取ればいいのでしょう?
※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。
青木家の土地には、自宅以外すべて相続税対策でアパートが建っています3兄妹はアパートの敷地と建物をすべて3分の1ずつ共有しています。そんなさなか、事業に失敗し、経済的に困っている佳恵さん夫婦が「アパートの共有持分を買い取ってほしい」と頼み込んできました。
義政さんは佳恵さんの持分を買い取ることを決断。しかし、いくらで買い取るかで問題が発生したのです。
「公示価格」「路線価」など「地価」にはいろいろある
義政さんが佳恵さんから共有持分を買い取るとなると、いわゆる「時価」でなければいけません。売買された不動産の場合の時価とは、第三者との間で取引される売買金額(取引時価)を指します。第三者に売却するならば、合意した金額を時価とみなすことができます。しかし、現実的にはアパートの共有持分を購入する第三者は、まずいません。
日本の土地には「公示価格」「路線価」「固定資産税評価」など、地価がいくつも存在します。義政さんはどの評価額を基準にして買い取るのが妥当なのでしょう。
今回の場合、路線価をベースとした相続税評価額は2億円前後でした。しかし、路線価は公示価格の8割程度とされているので、路線価を1.25倍した2.5億円の公示価格相当額を時価とする見方もあります。また、中古アパートの売買で市場価格の指針とされる収益還元価格で評価すると、1.5億円とさらに低い評価額となります。
「同じ時価でも、これだけ差があるのか。私はできるだけ安く買い取りたいけれど、佳恵は1円でも高い値段で売りたいと思っている。どうすればいいのでしょう」と、義政さんは悩みました。
結果的に今回は、路線価をベースとした相続税評価額2億円で買い取ることが合理的だとして、義政さんと佳恵さんは合意しました。
しかし、実際にこのような共有持分を、第三者に売ったとしても、時価よりもっと安い価格しかつかなかったと推測されます。共有持分というだけで、売買のハードルがぐんと上がってしまうのです。
相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
POINT
- ●ひとくちに「地価」といっても「公示価格」「路線価」など何種類もある
- ●共有持分を実際に売ろうとしても、時価より安い価格しかつかない
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記事提供:相続・贈与相談センター本部 税理士法人エクラコンサルティング