【資産安心コラム】2ページ 相続登記を失念したばかりに自宅の分割協議を余儀なくされる!
大学職員の宮田百合子さん(47歳)は、10年前に離婚して都内の実家に戻り、両親と暮らしていました。兄・俊夫さん(52歳)は実家近くの賃貸マンションで、妻と息子2人と暮らしています。4年前に父・雄大さんが81歳で死去。そのときの相続で百合子さんは俊夫さんと母・かえでさんと3人で相談しました。
雄大さんの遺産はわずかな金融資産と戸建ての自宅(評価額4,000万円)のみでした。金融資産は母・かえでさんが相続することに。高齢のかえでさんの面倒を見ることで、自宅は百合子さんが所有して住むことが決まり、俊夫さんも納得してくれました。相続税を申告する必要もなく、3人は遺産分割協議書を作成せずに相続を終えました。
ところが雄大さんの相続から4年が経過し、俊夫さんが急死してしまいました。2人の息子は中学生・高校生で、妻の和恵さんは今後の生活が不安になりました。そこで和恵さんは、俊夫さんの実家の財産価値に着目。「財産の一部を私と息子に分けてほしい」と百合子さんに要求してきたのです。慌てた百合子さんは専門家に相談。そこで、雄大さんの相続時に、自宅の所有者を百合子さんに移転する相続登記が行われていなかったことが発覚しました。
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったときに、その不動産の登記名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ変更することを指します。相続登記を失念すると、不動産を売却したり、不動産を担保にして金融機関から借入をすることが円滑にできません。
今回の場合、雄大さんは遺言書を作成していませんでした。よって、相続登記を行う際は、遺産分割協議書が必要になります。すでに俊夫さんが亡くなっているので、百合子さんとかえでさんは、俊夫さんの相続人にあたる和恵さん、昌樹さん、淳さんを交えて遺産分割協議をしなければいけません。
一方、遺産分割協議をしなければ、法定相続分での相続登記を行うことになります。そうなると、本来の俊夫さんの法定相続分にあたる、雄大さんの遺産額の1/4を、和恵さん、昌樹さん、淳さんに相続させなければいけません。いずれにしても、自宅の分割協議は避けられないのです。
相続登記を忘れると不要な争いを引き起こす
もし、雄大さんの相続時に、遺産分割協議書を作成し、自宅の名義を百合子さんに変更する相続登記を行っていれば、何の問題もありませんでした。相続登記を怠ってしまったために、必要ない親族の争いを引き起こしてしまったのです。
相続・贈与について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
POINT
● 相続登記を忘れると、年月が経つほど面倒な事態が起こる
● 法定相続分通りの相続を行わないときは、遺産分割協議と相続登記を必ず行うこと
※記事内の名前はすべて仮名。設定は実話に基づき一部脚色しています。