【今からできる相続対策】3ページ 一歩間違えれば多額の贈与税がかかってしまう? 暦年課税制度の正しい活用方法
相続税対策は早ければ早いほど、さまざまな手法を検討できます。早くから取り組むことで節税につながる“生前贈与”は、その代表例のひとつといえるでしょう。「生前贈与」と言っても、教育資金や結婚資金の一括贈与や相続時精算課税制度など複数の制度があります。今回は、生前贈与のなかでも最も一般的な暦年課税制度について見ていきましょう。
暦年贈与制度を活用すると毎年110万円を非課税にできる
暦年課税制度を活用すれば毎年110万円までを非課税とすることが可能です。
仮に、既に父が死亡しており(一次相続が終了している状況で、相次相続や数次相続は無いものとします)、母名義の相続財産が1億4200万円あるとしましょう。その財産を子ども2人で相続するとします。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」ですから、計算すると4,200万円となります。相続財産1億4,200万円から基礎控除額4,200万円を差し引くと1億円となり、この金額を法定相続分の5,000万円(2分の1)を子ども2人に按分して税額を計算します。
5,000万円には相続税が20%かかるので、1,000万円となります。ここから控除額(200万円)を差し引くと8 0 0 万円になり、子ども2人で1,600万円の相続税を納めないといけません。
一方、子ども2人に10年間続けて120万円ずつ暦年贈与するとしましょう。すると10年間で、2,400万円を子どもたちに贈与することが可能です。非課税枠を超えた10万円には10%の贈与税がかかります。2人ですから毎年2万円(10万円×10%×2人)かかることになり、10年で20万円の贈与税を支払わなければいけません。
暦年贈与をして遺産を2,400万円減らした場合、前述の計算をすると相続税は1,120万円になります。これに暦年贈与の際にかかった贈与税を加算すると1,140万円となります。生前贈与をしない場合(1,600万円)と生前贈与をした場合(1,140万円)では、460万円の差が出るのです。
なお暦年課税を活用する場合は、前述の相続開始前3年の贈与を注意しましょう。
暦年贈与にはリスクもある専門家に相談しながら活用しよう
節税効果が高い暦年贈与ですが、リスクはもちろんあります。たとえば、毎年同じ時期に同じ金額を継続的に贈与していると、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(例えば10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものと判断され、多額の贈与税が課税されることもあります。贈与契約書を毎年作成するなど対策方法は複数ありますが、専門家に相談しながら制度を活用する方がいいでしょう。
暦年贈与制度の活用を検討されている方は、ぜひ一度お問い合わせください。