【資産安心コラム】2ページ 同族会社の役員退職金適正額は?また死亡退職金はどうなるのか?

身内だけで会社の意思決定ができる同族会社の場合、退職金は法人税や相続税の節税対策に絶大な効果を発揮します。そこで今回は、同族会社の役員退職金をどう利用するかについて考えてみましょう。

役員退職金の適正額とは?

 ここで扱う退職金は、同族会社の役員に限定します。税法の規定では、原則的に退職金は法人の経費になります。但し、過大と認定された部分の退職金は、経費とならないことになっています。過大か適正額かの判定は非常に難しいのですが、一般的に言われている退職金の適正額算出方法は次のとおりです。
①最終月額報酬×②役員の在籍年数×③功績倍率
 ③功績倍率に関しては、業種、規模等の諸条件によっても異なりますが、一般的には代表取締役で2.0~3.0程度と言われています。創業社長や特別な功績がある役員であれば、さらに増額できる可能性もあります。但し、実務的には支給金額の絶対額がモノを言います。会社の規模や同業種、同地域の他社と比べて高額な場合は、目立つこともあります。
 例えば、月額報酬100万円の社長で在籍年数が20年とすると、“最終月額報酬100万円×役員の在籍年数20年×功績倍率3.0=6,000万円”となり、これが税務上過大とされない退職金の額と見込まれます。

役員死亡後の退職金はどうなる?

 まず、役員が死亡してから払う死亡退職金について考えてみます。
 被相続人の死亡に伴う退職金については相続税の対象になりますが、その場合には非課税枠が用意されています。500万円×法定相続人の数が非課税枠となるため、法定相続人が4人いれば2,000万円まで非課税となります。同族会社の役員であればこれを利用しない手はありません。
 先ほどの計算式によると、死亡退職金を増やす方法は①月額報酬を増やす、②在籍年数を長期にする、③役職を上げる、の主に3つです。
 ①について、生前に高額な役員報酬を受け取っていれば、それがそのまま被相続人の現預金という形で相続財産を形成してしまいます。とはいっても、ある程度の金額を支給しなければ、上記の算式で計算した際に、一定金額の退職金にはなりません。そのため、②について早目に役員報酬を支払い始めることが、得策です。場合によっては当初は報酬額を少なく留め、漸増させる方法もありますが、生前に引退して支払う退職金と違い、死亡退職の場合は会社側でいつ支給するかその時期を制御できません。

死亡退職金は相続税の納税資金にも

 死亡退職金の場合、それを受給するのは相続人です。つまり、相続人はその受給した退職金を、相続税の納税資金に充当できると言う事になります。もし、納税資金が足りず、延納や銀行からの借り入れで賄った場合、その利息は何の経費にもなりません。しかし、その同族会社に潤沢な資金があれば、その資金で充当できますし、潤沢でない場合でも、会社が退職金支給目的で銀行から借り入れをすれば、その利息は会社の経費です。すなわち、本来は相続人が個人的に負担すべき納税資金を、会社に転嫁している事と同じ効果が期待できます。