相続分譲渡証書の書式サンプルを弁護士が解説
相続分譲渡の内容は?
相続分譲渡とは、相続権を有する人が、自分の相続分を他の相続人や第三者に譲渡することを言います。
相続分とは「各共同相続人が遺産全体の上に持つ包括的持分または相続人の地位」のことをいい、これを譲渡することを相続分の譲渡と言います。
相続分譲渡の「相続分」とは、あくまで遺産分割時における権利割合を指しています。
個々の財産の共有部分を指すわけではありません。
譲渡する相手は、他の相続人でも、まったくの他人でも可能です。
また、全部でなくても、自分の相続分の半分など一部譲渡も可能です。
相続分譲渡の手続きは?
相続分譲渡の契約方法は自由です。口頭でも契約をすることが可能です。
但し、後のトラブルを防ぐために、相続分譲渡契約を書面で交わすことが通常です。
相続分譲渡契約を書面で交わす場合、相続分譲渡証書を作成するようにしましょう。
注意点は、以下です。
・ 譲渡人、譲受人の氏名や住所などを記載する(当事者の特定)
・ 誰の相続分を譲渡するかを記載する(被相続人の氏名)
・ どれくらいの相続分を譲渡するかを記載する(全部、一部など)
・ どのような条件で譲渡するかを記載する(無償、有償など)
・ 債務の扱いに関して記載する
相続分譲渡証書の書式サンプル
相続分譲渡証書
譲渡人●(以下「甲」という。)は、譲受人●(以下「乙」という。)に対し、本日、下記被相続人の相続について、甲の相続分全部を無償で譲渡し、乙はこれを譲り受けた。
記
(被相続人の表示)
本 籍: 兵庫県尼崎市●町●丁目●番●号
最後の住所: 兵庫県尼崎市●町●丁目●番●号
氏 名: 甲野太郎
生年月日: 昭和●年●月●日
死亡年月日: 令和●年●月●日
令和●年●月●日
(甲)
住所:東京都千代田区丸の内●丁目●番●号
氏名:乙野花子(実印)
(乙)
住所:兵庫県尼崎市●町●丁目●番●号
氏名:甲野一郎
解説
上記は、あくまで書式のサンプルです。
事案に応じて、内容、書き方等は異なりますので、作成する際は、有効な譲渡証書となるよう(無効にならないよう)、弁護士等の専門家にご相談下さい。
被相続人の表示
被相続人の表示は、氏名、生年月日、死亡年月日だけでなく、死亡時の本籍、死亡時の住所を記載するとよいでしょう。
不動産の相続登記が必要で、相続分譲渡証書を添付する場合は、上記に加えて登記上の住所を追記しておくことがあります。
相続分譲渡人の実印、印鑑証明書
譲渡人は、実印を押印のうえ、印鑑登録証明書を添付します。
不動産の相続登記など、相続分を譲渡する者は、相続分譲渡証書に実印で押印することが必要です。
また、当該印影にかかる印鑑証明書を法務局に提出する必要があります。
譲受人(相続分を譲り受ける者)の表示
譲受人(相続分を譲り受ける者)は、氏名、生年月日のみならず、本籍、住所も記載するとよいでしょう。
なお、本籍は記載しなくても相続登記の申請自体は受理されると思われます。
但し、他の添付書面(戸籍等)との照合、関係性を明確にするため、記載しておくほうがスムーズになると思われます。
相続分譲渡は弁護士法人アルテにお任せ下さい! 阪神尼崎駅すぐ
遺産分割では、ご家族の意見がまとまらず、相続争いにまでなるケースがよくあります。
遺産相続問題は、身内のトラブルであり、感情的な対立が生じやすいので、悩みや不安が大きく、解決までの心身の負担が大きくなりがちです。
相続分譲渡は、遺産を早くもらいたい(譲受人側)、遺産相続問題に巻き込まれたくない(譲渡人側)という場合にとられます。
但し、相続分をひとたび譲渡すると、譲渡人は遺産分割協議に参加できません。
後から遺産をもらうことが出来なくなりますので、慎重に検討する必要があります。
また、時々、相続放棄と混同して、相続分譲渡で債務を免れると勘違いされている方もいます。
ご自身の希望を実現するために、相続分譲渡という手段が適切なのか、その判断が重要です。
相続分譲渡を選ぶべきか、選ばない方がいいのかという判断が、最大のポイントです。
さらに、譲受人も、相続分譲渡が無効になると、相続分をもらえなくなり遺産分割協議をやり直すことになります。
無効にならないよう、有効な相続分譲渡を確実に実行することが必要です。
相続分譲渡は、譲渡人、譲受人双方にとって、権利関係に大きな影響が及びますので、ご自身の希望を実現する手段として相続分譲渡が適切なのか、相続分譲渡を有効に行うためにはどうすればいいのか、まずは弁護士等の専門家に相談ご相談ください。
弁護士法人アルテは、このような遺産相続問題で悩みや不安を抱えられているお客様の負担が少しでも和らぐよう、お手伝いをさせていただきます。
当社は、様々な解決方法から皆様によりふわさしい適切な解決方法をご提案するため、依頼者の方とのコミュニケーションを何より大切にしております。
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