お墓は相続放棄できるのでしょうか?
お墓は相続放棄できるのでしょうか?
例えば、次のような場合に問題となります。
質問1
父が多額の借金を残して亡くなったので、相続放棄をしたいです。
しかし、相続放棄をした場合、お墓、仏壇などは、継承できるのでしょうか。
あるいは、お墓なども放棄しなければならないのでしょうか。
質問2
父が亡くなりました。
遠方にあるお墓の管理が大変なので、お墓を相続放棄したいのですが、出来るのでしょうか。
相続放棄とは
相続は、プラスの財産だけではなく、借金といったマイナスの財産も引き継ぐこととなります。
相続放棄とは、被相続人が財産よりも多くの借金を残して亡くなったような場合に、「財産も借金もどちらも引き継がないと宣言すること」です。
相続放棄を行う場合には、相続人は相続開始を知ってから3ヶ月以内に、管轄の家庭裁判所へ相続放棄の申述をしなければなりません。
お墓は相続財産ではない
お墓の相続とは、お墓の権利と管理を引き継ぐことです。
但し、お墓のみにとどまらず、家系図や系譜、仏壇仏具などの祭具も引継ぎ、法要も主宰することが通常です。
お墓や仏壇仏具などの祭具は、一般の遺産相続の対象になりません。
財産的価値を付けて遺産分割協議で分けるものではありません。
従って、お墓や仏壇仏具などが残されていても、遺産分割協議で分けることはありません。
お墓は相続財産では無いことになります。
お墓は相続放棄の対象にならない
上記のとおり、相続放棄とは、相続財産(プラスの財産とマイナスの財産を含みます。)を取得する権利を放棄することになります。
相続放棄をした場合、はじめから相続人ではなかったことになり、一切の資産も負債も相続しません。
しかし、そもそもお墓や祭具は一般の遺産相続の対象にならないので、相続放棄とは無関係です。
お墓は相続財産では無いので、相続放棄の対象にはなりません。
質問1の回答
では、質問1を検討します。
上記のとおり、お墓は相続財産では無いので、相続放棄の対象にはなりません。
相続放棄とは被相続人の遺産を相続しないとの相続人の意思表示です。
しかし、祭祀財産の承継は相続ではありませんから、相続放棄をしても祭祀財産の承継には影響はありません。
相続放棄をしても、祭祀財産を放棄したことにはなりません。
従って、相続を放棄した人が祭祀財産を承継することも出来ます。
祭祀財産の承継は単純承認にならない
相続人が、相続放棄をした後に相続財産を消費するなどした場合には、相続人は単純承認(相続人が被相続人の権利義務を無限に承継する旨の表示)をしたものとみなされます。
この場合、相続放棄の効力はなくなり、債務も相続してしまうことになります。
では、相続放棄をした人が祭祀承継者となり祭祀財産を承継した場合に、相続財産を消費したことにならないのでしょうか。
この点、祭祀財産は相続財産には該当せず、ここでいう消費とは相続財産を処分することを意味しますので祭祀財産を承継することが消費に当たることもありません。
従って、相続放棄をした人が、祭祀財産を承継しても相続放棄の効力には影響はありません。
誰がお墓を相続するのか
なお、お墓を相続するのは「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」と呼ばれる人です。
祭祀承継者とは、その一族の代々の先祖をまつったり法要を行ったりなどの「祭祀」を引き継ぐ人です。
祭祀に必要なお墓や仏壇仏具その他の祭具、家系図や先祖代々の系譜なども引き継いで管理します。
では、祭祀承継者は、どのように決まるのでしょうか。
祭祀財産は、一般の預貯金や不動産などの相続財産とは異なる扱いになります。
祭祀承継者は、遺産分割協議によって決めることはありません。
祭祀財産を遺産と同じように相続人の間で分割してしまうと、祖先のお祭りのために使用することが困難となり、祭祀財産としての性質が損なわれてしまうからです。
そして、祭祀財産の承継者は、優先順位が民法で定められています。
祭祀承継者の決定方法は、次のとおりです。
・第1位→被相続人の生前の指定(口頭可)か、遺言で指定されたもの
・第2位→被相続人の指定がないときは、その地方の慣習
・第3位→慣習も明らかでなく承継者が決まらないときは家庭裁判所の調停か審判
質問2の回答
では、質問2を検討します。
上記のとおり、お墓は相続財産では無いので、相続放棄の対象にはなりません。
相続放棄とは被相続人の遺産を相続しないとの相続人の意思表示です。
しかし、祭祀財産の承継は相続ではありませんから、相続放棄をしても祭祀財産の承継には影響はありません。
相続放棄をしても、祭祀財産を放棄したことにはなりません。
従って、相続放棄をしても祭祀財産の承継は生じますから、お墓は祭祀承継者に帰属することになります。
お墓の購入、管理の費用を支払いたくないからといって相続放棄をしても当然に祭祀承継者にならなくなるわけではありません。
ご家族の事情によりお墓を継承できない、継承したくない場合は、別途、墓じまい、改葬、永代供養などを検討する必要があります。
なお、遺族にはお墓を建てる法律上の義務はありません。
お墓を建てずに遺骨を自宅で保管し続けることもできます。
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