遺留分減殺請求の対象と順序|尼崎の弁護士

遺留分とは、「一定の範囲内の相続人が最低限保障されている相続分」のことです。

つまり、被相続人の財産のうち、一定の相続人に必ず承継されるべき一定の割合を遺留分といいます。

被相続人は、遺言ないし生前贈与により自由に財産を処分することができるのが原則ですが、それも無制限ではなく、遺留分による制限を受けることになります。

一定の相続人には、ある程度の相続分が保障されている(守られている)ということになります。

相続分の指定、遺贈、贈与によって遺留分を侵害されてしまった相続人は、遺留分を侵害している人に対して、自己の遺留分を請求することができます。

これを「遺留分減殺請求」といいます。

 

遺留分減殺請求の対象は?

遺留分減殺請求の対象には、遺贈、死因贈与、生前贈与の3種類がありますが、減殺請求の順序があります。

ます、各対象を説明します。

遺贈

遺贈とは、遺言によって遺産を分与することです。

お世話になった人、相続権のない人に遺言によって遺産を渡す場合などに利用します。

遺言で遺産の全部又は大部分を渡した場合、本来の法定相続人が遺産を満足に受けとることができなくなるので、法定相続人は遺留分を請求することができます。

死因贈与

死因贈与とは、死亡を原因として財産を贈与する贈与契約です。

契約なので、遺贈とは異なり、受贈者と贈与者の双方が合意することが必要です。

遺言とは異なり厳しい要式はありませんが、実際には契約書がないと、死因贈与契約があったとは認められないことが多いです。

死因贈与は贈与とは言っても、遺言と同じように扱われることがあります。

死因贈与があった場合にも、遺留分減殺請求の対象になります。

生前贈与

生前贈与とは、贈与者が生きている間にその財産を相続人予定者に贈与する契約です。

生きている間に所有権を移転してしまう点が、死亡と同時に移転する死因贈与と異なります。

生きている間ならいつでもできるので、死亡に近い時期に贈与されていることもあれば、何十年も前に生前贈与されている例もあります。

生前贈与の中でも遺留分減殺請求の対象になるのは、死亡前1年以内に行われた贈与です。但し、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知りながら贈与をした場合には、1年より前の生前贈与であっても遺留分減殺請求の対象になります(民法1030条)。

※ 民法第1030条
第千三十条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。

※ 民法第1031条
(遺贈又は贈与の減殺請求)
第千三十一条 遺留分権利者及びその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈及び前条に規定する贈与の減殺を請求することができる。

 

遺留分減殺請求の順序は?

次に、遺留分減殺請求の順序を説明します。

遺留分減殺請求については、民法1028条以下に規定が置かれており、減殺の順序と割合は1033条~1035条によって定められています。

遺贈が贈与より先(民法1033条)

遺贈を先に遺留分減殺請求して、それでも足りない場合に贈与を対象にします(民法1033条)。

遺贈は死亡と同時に一方的に行われるものであるのに対し、贈与は生前に行われたり、当事者双方の合意によって行われたりするものです。

よって、贈与を減殺対象にすると影響が大きいので、遺贈を先に減殺請求するよう規定したと考えられています。

※ 民法1033条
(贈与と遺贈の減殺の順序)
第千三十三条 贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。

遺贈が複数の場合は目的の価額の割合に応じる(民法1034条)

遺贈が遺留分減殺請求額よりも大きい場合で、複数ある場合には、原則として目的の価額の割合に応じて減殺します(民法1034条)。

但し、被相続人が遺言によって意思表示をしていた場合はこれに従います。

目的の価額とは、「受遺者の遺留分額を超える部分」を指すと考えられています(最判平成10年2月26日)。

遺贈が遺留分減殺請求額に満たない場合には、目的の価額の割合関係なく遺贈をすべて減殺してから贈与に遡っていきます。

※ 民法1034条
(遺贈の減殺の割合)
第千三十四条 遺贈は、その目的の価額の割合に応じて減殺する。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

贈与が複数の場合は後の贈与から遡る(民法1035条)

贈与が複数ある場合は、新しい贈与から順に遡っていき満足が得られたところで終了します。

死因贈与は、生前贈与より先に減殺請求の対象になると考えられています。

死因贈与は、生前贈与に比べて遺贈に近い性質を持っているからです。

※ 民法1035条
(贈与の減殺の順序)
第千三十五条 贈与の減殺は、後の贈与から順次前の贈与に対してする。

まとめ

遺留分減殺請求の対象には、遺贈、死因贈与、生前贈与の3種類がありますが、減殺請求の順序があります。

遺留分減殺請求をするとき、まず、対象にするのは遺言による遺贈です。

次に減殺請求の対象になるのは、死因贈与です。

死因贈与は、生前贈与に比べて遺贈に近い性質を持っているからです。

そして、最後に減殺請求するのが生前贈与です。

 

遺留分は弁護士法人アルテにお任せください! 阪神尼崎駅すぐ

遺産相続問題の中で、トラブルになる可能性が高いのが遺留分の問題です。

遺留分の計算は、その算定や財産評価が非常に難しく、専門的知識を要する弁護士でなければ、正確に行うことが難しいと思われます。

弁護士法人アルテでは、相続に力を入れており、このような遺産相続問題、遺留分で悩みや不安を抱えられているお客様の負担が少しでも和らぐよう、お手伝いをさせていただきます。

弁護士が、適切な遺留分の解決方法をアドバイスします。

当社は、税理士、司法書士、不動産鑑定士、不動産会社等と連携しており、当社が窓口となることで、法律問題のみならず、税務問題、相続登記まで含めた問題を一括して解決することができます。

遺産相続、遺留分等でご不安がある場合は、是非、お気軽にご相談下さい。