遺留分減殺の調停|尼崎の弁護士

遺留分とは、「一定の範囲内の相続人が最低限保障されている相続分」のことです。

つまり、被相続人の財産のうち、一定の相続人に必ず承継されるべき一定の割合を遺留分といいます。

被相続人は、遺言ないし生前贈与により自由に財産を処分することができるのが原則ですが、それも無制限ではなく、遺留分による制限を受けることになります。

一定の相続人には、ある程度の相続分が保障されている(守られている)ということになります。

相続分の指定、遺贈、贈与によって遺留分を侵害されてしまった相続人は、遺留分を侵害している人に対して、自己の遺留分を請求することができます。

これを「遺留分減殺請求」といいます。

 

遺留分減殺請求の手続きの種類

遺留分減殺請求の手続きは、大きく分けて、

①交渉

②調停

③訴訟

があります。

通常、まずは交渉を行い、交渉でまとまらなければ、調停・訴訟等の裁判手続きに進みます。

以下、調停に関して、説明します。

 

調停の申立て

遺留分の基礎となる財産の価額について争いがある場合等、遺留分減殺請求をしても、相手方が自主的に財産の返還に応じず、交渉しても話しがまとまらないケースも当然あります。

このような場合には、家庭裁判所に調停を申し立てたり、まとまらない場合には訴訟を提起したりすることになります。

遺留分減殺調停の正式な名称は、「遺留分減殺による物件返還請求調停」です。

遺留分減殺調停では、裁判所の調停委員が間に入って話合いを進めます。

裁判所は、当事者双方から事情を聴いたり、必要に応じて資料等を提出してもらったり、遺産について鑑定を行うなどして事情を把握したうえで、当事者双方の意向を聴取し、解決案を提示したり、解決のために必要な助言をし、話合いを進めていきます。

申立先

・相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所

家庭裁判所における遺留分減殺による物件返還請求調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に調停の申立てをします。

相手方が尼崎に居住している場合は、神戸家庭裁判所尼崎支部に申立てします。

申立てに必要な書類の用意

(1)申立書及びその写し1通

(2)標準的な申立添付書類

【共通】

1.被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

2.相続人全員の戸籍謄本

3.被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

4.不動産登記事項証明書

5.遺言書写し又は遺言書の検認調書謄本の写し

【相続人に、被相続人の父母・祖父母等(直系尊属)(第二順位相続人)が含まれている場合】

6.相続人が父母の場合で、父母の一方が死亡しているときは、その死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

7.相続人が祖父母、曾祖父母の場合は、他に死亡している直系尊属(ただし、相続人と同じ代及び下の代の直系尊属に限る(例:祖母が相続人である場合、祖父と父母)がいらっしゃる場合は、その直系尊属死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

※同じ書類は1通で足ります。

※戸籍等の謄本は、戸籍等の全部事項証明書という名称で呼ばれる場合があります。

※申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は、その戸籍等は申立後に追加提出することでも差し支えありません。

※審理のために必要な場合は、追加書類の提出が必要となることがあります。

申立書の記載方法

申立書の記載方法は、以下です。

申立ての趣旨

申立ての趣旨には、遺留分減殺の対象物とその価額を明記し、それらを返還するとの調停を求めるという形で記入します。

遺留分減殺の順序は、遺贈→新しい贈与→古い贈与となっているため(民法1033条~1035条)、遺言によって相続財産を受け取った人にはその部分から減殺請求していくことになり、足りない部分は新しい贈与から遡って減殺します。

申立ての理由

申立ての理由には、主に以下の内容を書きます。

・被相続人の相続開始日と相手方・申立人の関係

・被相続人の遺言内容

・相手方が取得した相続財産等の内容

・相手方が申立人の遺留分を侵害していること

・申立人は相手方に遺留分侵害物件の返還調停を求めること

記載例

申立ての趣旨

相手方は、申立人に対し、相手方が被相続人○○○○から遺贈を受けた別紙物件目録記載の土地及び建物につき、その時価の2分の1に相当する物件を返還するとの調停を求めます。

申立ての理由

1 被相続人○○○○(本籍○○県○○市○○町○丁目○番地)は、その配偶者○○○○死亡後の平成○年ころから相手方と同棲し、内縁関係にありましたが、平成○年○月○日に相手方の住所において死亡し、相続が開始しました。相続人は、被相続人の長男である申立人のみです。

2 被相続人は、別紙物件目録記載の土地、建物を相手方に遺贈する旨の平成○年○月○日付け自筆証書による遺言書(平成○年○月○日検認済み)を作成しており、相手方は、この遺言に基づき、平成○年○月○日付け遺贈を原因とする所有権移転登記手続をしています。

3 被相続人の遺産は、別紙の物件目録記載の不動産のみであり、他に遺産及び負債はありません。また、前記遺言の他に遺贈や生前贈与をした事実もありません。

4 申立人は、相手方に対し、前記遺贈が申立人の遺留分を侵害するものであることから、平成○年○月○日到着の内容証明郵便により遺産の2分の1に相当する物件の返還を求めましたが、相手方は話し合いに応じようとしないので、申立ての趣旨のとおりの調停を求めます。

申立てに必要な費用

・収入印紙1200円分

・連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)

 

調停の進め方

遺留分減殺による物件返還請求調停では、裁判官または裁判所が選んだ調停委員が間に入って、話し合いをしていくことになります。

家庭裁判所の裁判官または調停委員が当事者双方から話を聞いて、合意をまとめていきます。

一般的には、両当事者が顔を突き合わせて話し合いをするわけではなく、個別に調停委員が話を聞き、それをそれぞれ相手方に伝えていくという方式がとられています。

話し合いが上手くいき、調停が成立した場合には、家庭裁判所で調停調書という書面を作成してくれます。

調停調書には確定判決と同じ効力があります。

調停当日の流れ

調停当日の流れは、以下です。

待合室での待機

調停当日は、指定された時刻までに待合室に入り、待機していると、指定時刻に調停委員が呼びに来て、調停室に案内されることになります。

なお、通常は、待合室には申立人側と相手方惻の2部屋がありますので、対立相手と待合室で顔を合わせることはありません。

調停室でのやりとり

第1回期日においては、通常は申立人惻から調停室に呼ばれ、まずは調停委員と中立人間で事実関係や争点の確認が行われます。

そして、次に、入れ替わりで相手方が調停室に呼ばれ、調停委員が聴取した事実関係や争点について、相手方の認識を確認することになります。

通常は、第1回期日はその程度で終了し、次回期日までの双方検討事項を整理した上で、次回期日の調整が行われます。

第2回期日以降は、前回期日までの流れに応じて、適宜申立人・相手方が交代で調停室に呼ばれ、争点に関する双方主張の相違について妥協点がないか、調停委員との間で検討が行われることになります。

なお、申立人・相手方の一方が調停室で調停委員と話をしている間、他方当事者は待合室で待機することになり、1時間以上も待合室で待ち続けるということが稀ではありません。

調停成立日の流れ

最後の調停成立の日には、当事者全員が一同に会し、調停委員に加えて裁判官(旧家事審判官)も調停室に入り、裁判官(旧家事審判官)が調停条項を読み上げて、各当事者に異存がないことを確認した上で、調停を成立させます。

この調停条項については、確定判決と同一の効力があるとされています(家事事件手続法268条1項)。

なお、当事者全員の同席が原則ですが、やむを得ない場合には代理人弁護士のみの同席でも許容されることがあるほか(家事事件手続法51条2項)、出席困難な当事者については、事前に調停条項に異存ない旨の確認書面を受領しておくことで出席に代える運用もなされています(家事事件手続法270条1項)。

 

調停のメリット・デメリット

調停のメリット・デメリットは、以下です。

メリット

調停はあくまで話し合いですので、訴訟などよりも穏便かつ柔軟に紛争を解決できるというメリットがあります。

また、裁判官または調停委員という専門家の第三者が間に入ることによって、当事者同士で話し合いをしていたときよりも話し合いがまとまりやすいという点もメリットです。

話が早くまとまれば、当然、解決も早くなります。

デメリット

調停はあくまで話し合いですので、話がまとまらなければ紛争が解決しないというデメリットがあります。

また、場合によっては、相当長期になることもあります。

 

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