任意後見契約が、将来に備える制度(老い支度、老後の安心設計)であると聞きますが、どういうことですか?

日本は、高齢化が急速に進行中で、65歳以上の人が3296万人おり、その総人口に占める割合は25.9パーセントを占める時代を迎えています(平成26年9月15日現在)。

人間は、年を取ると、次第に物事を判断する能力が衰えてきます。これが進行すると、認知症と言われる状態になることがあります。 認知症に罹患して、判断能力が低下しますと、自分では、自分の財産の管理ができなくなってしまいます。

また、病院等で医師の診断・治療を受けようとしても、病院等と医療契約を締結することもできないし、入院のための契約締結もできないし、施設に入ってお世話を受けようとしても、施設に入るための施設入所契約自体ができなくなってしまいます。

介護保険を利用したくても、その手続をすることも大変の上、何より介護を受けるための介護サービス提供契約を締結することができない、ということになってしまします。

すなわち、年をとってくると、たとえ、いくらお金を持っていても、自分のお金であって自分で使えない、自分で自分に関することが処理できないという事態が起き得るのです。

そのようなことを防ぐため、自分の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ、自分がもしそういう状態になったときに、自分に代わって、財産を管理してもらったり、必要な契約締結等を代理でしてもらうこと等を、自分の信頼できる人に頼んでおけば、すべてその人(「任意後見人」と言います。)にしてもらえるわけで、安心して老後を迎えることができる、というわけです。

このように、自分が元気なうちに、自分が信頼できる人を見つけて、その人との間で、もし自分の判断能力が衰えてきた場合には、自分に代わって、自分の財産を管理したり、必要な契約締結等をして下さいと依頼してこれを引き受けてもらう契約を、任意後見契約といいます。

以上の理由から、任意後見契約は、将来の老いの不安に備えた「老い支度」ないしは「老後の安心設計」であると言われています。

もっとも、任意後見契約を締結しても、それを使わないまま最後まで元気で大往生ができたときは、任意後見契約書の作成費用は無駄になってしまいますが、それは作成しない場合のリスクと比較すれば微々たるものといえます。備えをしておくことは、とても大切です。