判断能力が低下したわけではありませんが、年を取って足腰が不自由になったり、身体能力が衰えて、何事をするにも不自由を感じるようになった場合に備えて、あらかじめ、誰かに財産管理等の事務をお願いしておきたいのですが、これも任意後見契約でできますか?

任意後見契約は、判断能力が低下した場合に備えた契約なので、ご質問のような場合には、任意後見契約によることはできず、通常の委任契約を締結することにより、対処することになります。

そして、実際には、このような通常の委任契約を、任意後見契約とともに併せて締結する場合が多いです。

任意後見契約は、判断能力が衰えた場合に備えるものなので、判断能力が低下しない限り、その効力を発動することがありませんが、人間は、年を取ると、判断能力はしっかりしていても、身体的能力の衰えは、どうしようもなく、だんだん何事にも不自由を感じるようになってくることがあるからです。

寝たきりになってしまえば、いくら自分の預貯金があっても、お金をおろすこともできません。

そのような事態に対処するためには、判断能力が衰えた場合にのみ発動される任意後見契約だけでは不十分です。

通常の委任契約と、任意後見契約の両方を締結しておけば、どちらの事態にも対処できるので安心です。

そして、判断能力が衰えた場合には、通常の委任契約に基づく事務処理から、任意後見契約に基づく事務処理へ移行することになります。